善意も悪意も入り交じった口コミの取捨選択

転職サイトの口コミで、悪評を書かれた会社が、『“投稿した人間が誰なのか明らかにすべきだ”と訴えて、結果的には名誉毀損で訴えた会社が勝訴した』というニュースがありました。“名誉毀損”なので、その口コミの投稿には、事実無根だったり、単なる誹謗中傷だったりと、行きすぎた表現が多々あったのでしょう。

この一件から、「口コミは危険だ」、「もう口コミはやりにくくなる」、「表現の自由が法によって歪められた」などの意見が寄せられるようになりましたが、みなさんはこれを、どのように受け止めるでしょうか。私自身は、がんを患い、医療用ウィッグの使用が急務となったことから、口コミサイトを利用した時期がありました。

医療用ウィッグは利用者からの意見が少なく、何とか手がかりが欲しいと口コミをハシゴし、ようやくたどり着いた末の頼みの綱でした。でも、やはり私についての誹謗中傷や、製品についての悪口が3割以上は混ざっており、読み切るのに苦労したのを覚えています。

口コミに対する4つの注意事項

  • 口コミは便利なコミュニケーション手段だけれど、誹謗中傷も悪意も、善意や本心も入り交じっています。
  • 利用者はそれを覚悟した上で読みすすみ、冷静に取捨選択するだけの体力と精神力が必要です。
  • どの口コミをどこまで信じるか、どこまでの悪口なら許せるか、自分なりの尺度が必要です。
  • 口コミで言われていることの善悪・真偽のすべてには、裏取りが必要です。安易に口コミを信じないようにしましょう。

口コミを“楽しんでしまう人”の責任は大きい

私の個人的な意見としては、裁判で先のような有罪判決が出て良かったと思っています。ネット上はいまでも無法地帯同然なので、一度、悪意のある書き込みに対して後につづく人が出たら、際限がなくなってしまいます。表現の自由がある一方で、個人の名誉も保たれなければならないことは当たり前のことです。

今後はこの一件が判例となりますから、同じような被害にあった個人や会社が訴えやすくなります。俗に、誹謗中傷を面白がって、事実を確かめもせずに追従していく人の行為を“尻馬に乗る”と言います。こういう人の心ない書き込みが、人を傷つけ、情報を歪め、ネットそのものを不審なコミュニティに追いやってしまいます。

  • ネット社会を汚す人は、自分の住んでいる場所を汚くしているのと同じ。
  • 今後、単なる口コミでの誹謗中傷は、1つの凡例が出たことで訴えられやすくなる。
  • 誹謗中傷した最初の1人、火付け役、尻馬に乗った人は、損害賠償の対象に。
  • ネットは主犯と従犯が特定されにくいので、同罪になる可能性が高い。
  • 悪質な場合は、実名が公表されることもある。
  • かつては弁護士が訴訟を起こし、損害賠償請求に至った例も。

ネット社会はいまやリアルな社会と同じと言って良いほど利用者がおり、口コミを拠り所としている人が多くいます。医療用ウィッグが不可欠になった私のような人で、体験者の意見を求めている闘病中の患者さんもそうです。少なくても口コミの尻馬に乗って面白がるような行為はやめにしましょう。