匿名がマストという女性だって大勢いるはず
口コミは匿名性の高いオピニオンツールである。本名を明かすかどうかは本人の自由だから、フェイクもいっぱいあるけれど、真面目で本気の意見も多数存在する。何をどのように解釈するかは読み手の自由なのである。
口コミのこうしたあり方を非難する人もいるけれど、そもそも匿名でないと意見を発信できない人や、匿名だから言える、思い切って意見の発信に踏み切ったという人もいる。たとえば医療用ウィッグを利用せざるを得ない女性たちもそうだ。
- 自分が医療用ウィッグを使っているということを世間に知られたくない。
- 知っているのは家族だけ。友人や知人、会社には内緒にしている。
- 自分自身、気持ちの整理がついていない。カミングアウトする気になれない。
- 世間に知れると子どもや家族がイジメに遭うのではと気になる。
- 実名でしか投稿できなかったら、どんな非難にも返信しなければと思ってしまう。
- 実名で発信することのプレッシャーは強力。強迫観念にかられる。
医療用のウィッグを利用している人たちの気持ちを理解することはむずかしいと思うが、上記のように、口コミ1つにでも、向き合おうとすればプレッシャーがのしかかる。ほんとうなら口コミになど参加しなくてもいいはず。
それで体調を崩したり謂われのない中傷を浴びせられたりするくらいなら、健全な日常生活を選んで、体調の回復と社会復帰に専念した方がいい。しかし「それでもヒトコト言っておきたい」という思いには、相当な理由があるのだと思う。
口コミの悪意を、善意が上回る日はくるの?
ある女性は医療用ウィッグの選び方に悩んで、「どなたかいい製品があったらおすすめを教えてください」と口コミした。すると返ってきた回答には、何のメッセージもなく、メーカーのURLだけがいくつもペーストされていた。
またある女性のもとには、『みんな悩んで苦しんでいる。病気はガンだけじゃない。ガンバって欲しいけど』という返答があったという。励ましよりも、まるで本人が甘えているとでも言わんばかりのメッセージだ。
もちろんそれとは逆に、真面目な意見や回答を寄せてくる例もある。“口コミと医療用ウィッグは相性がいい”といっても、返ってくる返答は玉石混合で、それを仕分ける最中には非難中傷のメッセージも目にしてしまう。
善悪が入り乱れているのは現実の社会も同じだが、抗がん剤治療の副作用や脱毛に苦しんでいるみなさんは、どうか非難中傷や悪意のある書き込みに負けず、体調や気分が許すなら、口コミをつづけて欲しい。
医療用ウィッグに関する意見や口コミの投稿は、数そのものが極めて少なく、ネット上ではまだ市民権を得ていない。いつの日か、医療用ウィッグへの意見が珍しくなくなって、多くの女性がそれに触れられたら、正しいウィッグの選択にも役立てられると思う。