口コミ産業がもたらす光と影。ユーザーの利益とは

ネットの社会にはブロガーと呼ばれる人たちがいて、新製品やサービス、観光名所などの情報発信を行なっています。

初期のころは素人が純粋に口コミをしていましたが、その波及効果の大きさに目を向けたメーカーがブロガーに「自社製品の情報発信(使用感や対応の良さ、面白さなど)」を依頼するようになりました。

さらにそれに目をつけったサイトの運営者・事業者が、メーカーとブロガーを利用し、広告収入や利益収入の一部を受け取るというビジネスモデルをつくりました。口コミというのも半数以上はそのような書き手が収入を得るために書いているものです。

三者三様の思惑が一致したことで、いまのネット社会が構築されています。このような状態を「口コミ産業」といいます。

嘘と宣伝で物を買わせたり、サービスに誘導させたりする仕組みなので、あまりいい社会とはいえませんが、いい面もたくさんあります。拡散を狙って、“少しでも良いモノを作って客に買ってもらおう”と努力するため、モノやサービスの改良スピード、進化のスピードが加速するという点です。

また口コミ産業の中では悪評も立ちます。悪評も好評も拡散スピードがハンパではない速度なので、ブロガーはメーカーのお目付役のような立場にもなっています。良くないものは、感じたままに良くないと言ってしまえる口コミの別の面での効果です。

口コミの的にならない医療用ウィッグは進化が遅い

さて上記のように考えてみたとき、機能や品質で「もっと進化して欲しいはずの医療用ウィッグ」は、口コミ産業という枠組みの中に入っているでしょうか。

相手にされているのでしょうか?医療用ウィッグの利用者からの口コミ数があまりにも少ないため、正直なところ話題には上らず、ブロガーがわざわざ口コミして「この製品のほうがいいよ」などと、大きな流れをつくったり、口コミで評判という宣伝を拡散したりする対象にもなっていないのです。

そうだとしたら、医療用ウィッグの善し悪しが公の場に出てくる機会をなくしたまま、メーカーどうしの改善競争は起きてきません。

製品やサービスの進化が、他のジャンルのモノにくらべて、著しく遅れてしまう可能性があります。極端な言い方になりますが、“口コミ産業”の餌食にさえなっていない医療用ウィッグは、影の薄い、ダメな存在感しかないのです。

抗がん剤治療の予定がある人でさえ、いまだに医療用ウィッグがあることを知らない、一般のウィッグでも構わないと思っている女性が多いなども、口コミが少ないことによる弊害。医療用ウィッグは、ネットという公の場でもっと酷評にさらされ揉まれ、進化を早めるべきではないでしょうか。