うつ病・介護、外界と繋がれるのはネットだけ
ネットの時代になって、あれやこれやと方々に手を尽くさなくても、簡単に情報が手に入るようになりました。母親の介護が必要になり、日々のほとんどを巣篭りのようにして暮らしている私は、50才の半ばにして、その便利さを痛感しています。
私の母親は78才になりましたが、うつ病を発症したのをきっかけにほとんど寝たきりの状態になり、目が離せない状態となったため、私は勤務していた会社を辞め母の介護と見守りに専念することになりました。親子2人暮らしですが、親子そろって引きこもり生活を余儀なくされております。
うつ病というのは怖いもので、自殺願望があり、明るさや音やテレビといったものを受け付けなくなり、窓はカーテンをしたまま本人の気持ちの好転を待つしかない病気です。そうなると母親からは目が離せない状態で、外界とつながる情報源はインターネットしかなく、“その情報の真偽・いい悪い”を確認するのは、ネットにある口コミが頼りとなります。
母親の様態のいいときを盗んでネットに向かい、口コミをたどっていくことで買い物をしたりサービスを受けたりしています。そんな生活が2年もつづいたある日、寝たきり同然だった母に、明るい兆しが見えてきました。
カーテンを開けて欲しいと言い出し、こちらからの呼びかけに、かすかに笑顔で返答ができるようになったのです。それからしばらくすると、テレビをつけてもいい? 今度、久々に桜でも見に行こうかと、劇的な回復をみせるようになりました。
この春には母親を連れて花見に遠出できそう
絶望の淵から生還したような喜びでしたが、困ったことが1つありました。母の容姿が激変していて、やせ細り皮膚はたるんで、髪はほとんど抜け落ちていました。「このまま元気になってパクパク食べるようになったら、すぐに元の母さんに戻れるよ」、そう言って励ましてはみたものの、無事にこのまま回復に向かえるか、不安は募るばかりでした。
そこで心療内科の医師に相談したところ、「医療用ウィッグというのがあるから、インターネットで調べてみてはどうか」ということになりました。クリニックに通う患者さんの中には、精神的なストレスから脱毛症に陥っている人が多く、先生は症状にあわせて医療用ウィッグの活用をすすめているのだそうです。
しかも「ネット通販で購入でき、自分にあわせて髪形をアレンジしてもらえるようになっている」ということで、人目にさらされたくない患者さんには、これ以上の方法はないほどピッタリなのだそうです。
その話を聞いて、私もネットで通販できる医療用ウィッグを検索し、口コミをたどって「これなら大丈夫だろう」という会社(製品)を見つけだすことができました。試着用に届いたウィッグを見て、母親は最初のうちは尻込みしていましたが、ウィッグを着けて変身したようになる自分の姿がうれしいらしく、アレンジについても自分の意見を言うようになりました。
おかげさまで、予行演習の外出・散歩を終え、春の花見のシーズンには、目的地に向けた遠出もできそうです。