医療用ウィッグを買ってやりたい。でも買えない
「最近、ミッシングワーカーのドキュメント番組観たよ、泣きそう~」というコメントが口コミにありました。ミッシングワーカーというのは、親の介護で娘や息子が職を失う人たちのこと。日本では高齢化にともなって、親が病気を発症する年代が70才代という例も少なくありません。親が70代なら息子や娘は50代。
介護施設に入れない世帯の親は在宅介護となり、家族が介護人の役割を負う。そうなると、最初のうちは仕事と介護の両立を試みるが、いずれ体力・気力が底をついて会社でミスを連発するようになる。早い話が会社からクビを言い渡されるのだ。家族の全員が人生の最期まで健康でいて欲しいが、人生、そうはいかない。
ドキュメント番組は、いまある日本の家庭像を克明に描き出していた。このようなミッシングワーカーは、いま日本に103万人いるそうだ。『生産労働人口が減っていく日本社会の中で、働きたくても働けないこうした人たちは社会的な損失だ。暮らしに寄り添うオーダーメイド感覚の法整備が必要ではないか』と番組では締めくくっていた。
番組を観ていてハッとなったのは、「母親に医療用ウィッグを買ってやりたい」という息子の葛藤が切り取られたシーンだった。抗がん剤治療の副作用で脱毛した母親のために医療用ウィッグを買ってやりたいが高額すぎて買えない。「ネット通販にある格安の医療用ウィッグならなんとか~」と、親が寝息を立てる横でため息~。
医療用ウィッグはオーダーメイドでなくてもいいのに
高額な医療用ウィッグの購入に関しては、自治体もようやくその実態に気づき補助金を出すようになったが、すべての県や市ではない。また補助金の額も2万円程度なので、「貰わないよりはマシ」という程度の額でしかない。ミッシングワーカーの世帯は、失業保険と預貯金の取り崩し、それに親の年金で何とかしのいでいるが、失業保険も預貯金もいずれは底を尽き、給付終了の期限がやってくる。
この親子、どうなるのだろうと、番組を観ている人は誰もがそう考えるが人ごとではない。ふと気がつくと、次は自分の番だと思って見入ってしまう。冒頭に紹介した口コミの反応には、「日本人は心配性だから明るい人が少ない」、「貯金している人は多いが病気の人も多い」、「そうなったらなったとき」など冷めたものが多い。
日本人や社会は、ものの見方や反応の仕方まで変質してしまったのだろうかとさえ思ってしまいます。口コミなので短いフレーズでのやりとりでしかなく本音は聞けませんが、もともと親の介護が原因で職を失っている人は、外出するのに必要な医療用ウィッグでさえ買う余裕のない人たちが多い。
医療用ウィッグの購入予定がある方へ
- 国での補助金制度はないが、地方自治体が自主的に「医療用ウィッグ購入の補助金制度」を開始している。
- 最寄りの市役所・区役所、出張機関に問い合わせれば、補助金制度の有無はすぐに確認できる。
- 申込みには医師の診断書や当該窓口に申請するための書類作成が必要になる。申請方法は異なるので確認が必要。
- 補助金の額はだいたい2万円程度。通販の医療用ウィッグなら3万円前後でもあるので購入資金としてプラスにはなる。
このミッシングワーカーの社会現象は別名「8050問題」とも呼ばれている。被介護者である親が80才代、世話をする息子や娘が50才代で社会の担い手が消失していく有様のアウトラインを言っている。医療用ウィッグはオーダーメイドでなくても十分。リハビリの一環でもあるのだから、もう少し“生活の実態に寄り添う補助”というのはできないものだろうか?